ファーストペンギンはシャチに食われるだけかもしれない

変化する力と維持する力


どんな企業も、本質的に2つの拮抗する力を内包しています。それは、「変化する力」と、「維持する力」です。


「変化する力」に対しての抵抗勢力、という文脈で「維持する力」が悪者にされることも多い気がしますが、本質的にはどちらも重要な力です。そして、「維持する力」というのは現状停滞の力になってはいけません。


荒海の中を航海する船を思い浮かべるとよいでしょう。船長は企業におけるリーダーです。変化することが正しいと思うのであるならば、迷うことなく進路をそちらに向けるべきです。


そしてリーダーとマネジメントは違います。リーダー(例えばCEO)が“正しいことを行う”のに対して、マネジメント(例えばCOOやCFO)の役目は“ことを正しく行う”ことです。


ポジションやタイトルは様々でしょうが、どちらも企業には必要な力です。


リーダーが進路を決めたら、荒海を行く船を正確に導くのは優秀なマネジメントである航海士の仕事です。航海士が「維持する力」を正しく行使すれば船は進路へ向けて正しく航行し、企業は崩壊することはありません。


「維持する力」は目的地に向けて船体と航路を維持する力であり、波や風の状況を読まずに現状の場所に停滞するということではありません。そこを間違えると企業は推進力を失います。


一人の人の中にも同じ力が存在


一般的に変化することが得意な人(変化タイプ)と維持することが得意な人(維持タイプ)がいると思います。それは時と場合によっても変わっていきますが、どんな人もその拮抗する二つの力を内包していてそのバランスが場合によって変わるのでしょう。


自分はどちらのタイプだか考えたことがありますか?


特異な人もいます。自分は維持タイプなのに、外に対して変化を促すタイプです。そのような人は本質的にインキュベーターやベンチャーキャピタリストに向いているのかもしれませんね。


変化タイプを見ていて気付くことがあります。それは、変化することに慣れているということです。この手のタイプは変化することが普通なので、自らを束縛するような物に最初から手を出さないことです。これらの人には、変化することが維持することなのでしょう。


俳諧の世界には不易流行という考え方があります。日本人の心に沁みついている考え方だと思います。不易は時代や新古を超越して変わらない物事の本質です。流行は時代を経て変わりゆく見た目の新鮮さです。


つまり、変化とは本質を維持すること、維持とは本質を守るために変わり続けることなのです。


変化を起こすことが“勝ち”なのか


世の中には、変化を起こした人が勝つような錯覚があります。果たしてそうでしょうか。特にプラットフォーム系の事業は勝者総取り(Winner takes all)という言葉があり、一番早く始めた人だけが市場の旨味を得られるイメージがあります。


イノベーション論者は「ファーストペンギンになれ」といいますよね。ファーストペンギンとは、群れの中で氷山から真っ先に海に飛び込むペンギンです。一番度胸があり、冒険者ではありますが、果たして一番魚を得ることができているかどうか。


もう一度言います。「一番乗りが勝つイメージがあります。」


。。。「イメージ」だけです。


そこには生存バイアス(サバイバーズ・バイアス)があることを忘れてはいけません。つまり、一番乗りで飛び込んで、旨味を得て帰ってきたペンギンしか我々は知らないということです。


一番先に飛び込んで、真っ先にシャチに食われて消えていったペンギンを我々は知らないですし永遠に称えないのです。


実際、最初に飛び込むペンギンが一番成功するわけではないということを論理的に説明する人もいます。度胸だけではないちゃんとした計算が裏に必要なのでしょう。


もしくは最初に飛び込んで食われた奴を見つつ二番目に飛び込んだ奴がファーストペンギン面しているケースは多々あるのでしょう。


でも、やっぱり最後は運も重要ですかねぇ。


齋藤和紀




487回の閲覧

© 2018 by SingularityU Tokyo Chapter & Exponential Japan

  • Facebook Clean Grey